第一回でご紹介する町子さんはCHOBOのメンバーでおなじみのタカイナツコさん。
京都・西陣の路地奥長屋に中学からの女友達とルームシェアをして暮らしている。
勤め先も中京区の築100年以上経つ町家を改修した大学の校舎で、町家の未来を担う若人のひとりだ。
彼女が町家に惹かれる理由は何だろうか?
間取りにひとめぼれ
ひょっとすれば気付かず通りすぎてしまいそうな路地、機織長屋が並ぶ中のタカイさんの住まいを訪ねた。
実物を見ずに不動産屋で平面図を見て即決したという住まいは、
真ん中に土間の玄関があり、両側に階段がふたつという不思議な間取り。
「家の中に段差があるのも魅力」とタカイさんは笑う。
大きな吹き抜けは、大きな織機があった頃の名残でこの地域では珍しくないそう。
二階の屋根裏部屋から下の階が見下ろせ、同居人との会話が弾む。
一軒家である町家を選んだのはなぜなのか。
「学生時代もメゾネットタイプのマンスリーマンションに住んでたことがあったけど、
大家さんの顔が見えなかったり、住人の入れ替えが激しかったりと落ち着かなくて。
いつか京都に腰を据えて暮らしたいと思っていた。その土地に根づく生活を求めてたんやと思う。」
引っ越した我が家には以前の住人の痕跡が残っていた。
「始めてここに来たとき、カーテンレールが変なところについてたり、物が残っていたり…、
怖いかもしれんけど(笑)、前の人の思いを引き継いでいる感じがした。
どんな人が住んでいたのか想像するのもおもしろい。普通のマンションだったらありえない。
貸すとなったら清掃業者が入ってきれいにしなあかんもんね。」
「町家」というデザインが人に優しい暮らしを作る
大学時代は住環境デザイン学科で「住む環境」の大切さについて勉強していたタカイさん。
どれだけ人に影響を与える環境のデザインを考えられるかと悩んだ結果、
町家が人に対してとても優しく、理想的なデザインをしている事に気づいたのだという。
「それが町家に惹かれたキッカケかも。住む人と家の関係を築いていきたいと思って。
土間があって、ミセの間で人とのやわらかなコミュニケーションがあるような。
昔から体感するのがモットー。住んでみないと分からないから、ちゃんと住んでみようと思った。」
人が集まる家にしたい
「この家に来るとみんなおばあちゃんちみたいで落ち着くって言う。
みんながみんな、おばあちゃんちがこんなのじゃないと思うけど、
どっかで町家は日本人の感性とか、遺伝子の”おばあちゃん”の部分をくすぐってるんちゃうかな。」
タカイさんの理想の家は常に人が集まってわいわいしている家。鍋や飲み会はいつもここに集合。
「たくさん人が集まった日はご近所さんに迷惑かけてないか意識するようになったかな。
路地の人と顔を合わせたら必ず挨拶する。マンション暮らしの時は全然人の存在なんて気にしてなかったなぁ…
めんどくさいと思うかもしれないけど、人の存在を感じるのはすごく人間らしい暮らし。」
今日も気の置けない仲間達の笑い声がたえない。
こんな毎日を重ねて、彼女は大好きな家との楽しい関係をこれからも探してゆくのだろう。
文・写真●よしだれな
にぎやかし●じゃがいもジョー
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